現在、工事現場や建設現場での盗難被害が増えていると言われています。
その背景には、長引く不景気や人手不足による管理体制の脆弱化などが挙げられるかもしれません。
また、技術革新による工具や計測機器の高性能化及びコンパクト化により使いやすくなった反面、盗みやすくなったとも言えるでしょう。
そこで今回は工具盗難の起こりやすい状況から狙われる工具、さらには様々な防犯対策までを紹介してきます。
工具盗難は窃盗罪です!絶対に行ってはいけません!
窃盗罪は、刑法第235条において『10年以上の懲役または50万円以下の罰金を処する』と定められています。
また窃盗罪は、現行犯逮捕と通常逮捕(裁判所から令状が発布されて行う逮捕)の割合が多く、未遂の場合でも罰せられます。
ちなみに、リサイクルショップや中古屋に、盗難品の工具が持ち込まれることはよくあり、店舗の情報提供を基に逮捕されている事例も多数あります。
このように、工具の盗難は刑事事件として扱われ、10年以上の懲役か50万円以下の罰金が科せられる犯罪です。
法律を守って、健やかな日々を過ごしましょう。
工具盗難が起こりやすい状況はどのようなシチュエーション?
工具の盗難は、どのようなシチュエーションで起こるのでしょうか?
それは、主に以下の3つのシチュエーションだと言われています。
- 車上荒らし
- 建屋侵入による盗難
- 現場での盗難
本項では、上記のシチュエーション別に紹介していきます。
1.車上荒らし
工具が盗難される1つ目のシチュエーションは、車上荒らしです。
工事現場では、その日の工事に不必要な工具を車に残して作業場に向かうケースも多いのではないでしょうか?
このケースでは、車の周りが無人になる(もしくは人目に付きにくい)ことも想定され、バレることなく工具を盗むには好都合なシチュエーションと言えます。
また、車にカギを掛けていたとしても窓ガラスを割って侵入し、工具を盗んだり、車ごと持ち去ったりとさまざまなケースがあるようです。
2.建屋侵入による盗難
工具が盗難される2つ目のシチュエーションは、建屋侵入です。
工事現場の倉庫や資材置き場などには、価格の高い電動工具や精密計測機が置かれていたり金属系の資材が豊富に保管されていたりするケースがあります。
また、工事現場の倉庫や資材置き場は人目が付きにくいとも考えられるので、狙われやすい傾向にあるのではないでしょうか。
特に銅は、近年価格が上昇傾向にあるためよく狙われているので注意が必要です。
3.現場での盗難
工具が盗難される3つ目のシチュエーションは、現場での盗難です。
車から作業場近くに工具を持ってきたとしても、作業中に使っていない工具を監視することは物理的に不可能です。
また、工事現場では多くの業者や関係者が訪れるので、比較的侵入しやすい場所だということも出来ます。
そのため、企業レベルの盗難対策はもちろんのこと、個人レベルの盗難対策も意識する必要があるでしょう。
盗まれやすい工具の特徴は?小型設備まで狙われる⁉
前項では、工具が盗まれるシチュエーションを紹介しました。
前項でも紹介した通り、以下のような価格の高い工具が狙われる傾向にあります。
- 電動工具
- 精密測定機器
- 有名メーカーの工具
- コンプレッサーなどの小型設備
では、この4種類の品物を順に見ていきましょう。
1.電動工具
電動工具は、工事現場ではスパナなどの手持ち工具と並んで、多く使われている工具です。
また、手持ち工具に比べると価格が高い傾向にあることや軽くてコンパクトな品物も多い事から狙われやすい傾向があります。
さらに、電動工具は中古市場でもよく取引されているので、転売しやすいことも盗難被害にあう原因だと言えるかもしれません。
2.精密測定機器
工事現場では、様々な精密測定器が使われています。
例えば、簡単に距離を測れるレーザー距離計や騒音規制のある現場使われる騒音計、電気工事で使われるデジタルマルチメータやクランプメータなどがあります。
また、このような精密機器はハンディータイプが多く、価格が数千円から数万円の機器が多い印象です。
さらに機能が充実した測定器になると、ハンディータイプにもかかわらず、数十万円もする機器もあるので、狙われやすいと言えるでしょう。
3.有名メーカーの工具
工具のメーカーには、マキタやパナソニック、ボッシュといった国内外の大手有名メーカーが数多くあります。
これらの有名メーカーの工具はブランド力・品質が高く、値段も安くはないことが狙われる原因だと言えるでしょう。
また、工具の知識があまりないケースでも有名メーカーの工具は、高値で転売できるようなイメージがあるので、被害を受けやすい傾向にあるのではないでしょうか。
4.コンプレッサーなどの小型設備
盗難被害の中には、コンプレッサーや発電機などの小型設備も存在するようです。
工事現場では、様々な場面で空気や電気を必要とするので、小型のコンプレッサーや発電機が用意されているケースがあります。
また、コンプレッサーや発電機は手で持ち運び出来ないようなイメージがありますが、20kg前後の品物も存在します。
これらの価格は、数万円から十数万円とそれなりの価格なので、盗難の可能性が無いとは言い切れない現状なのかもしれません。
防犯対策はまず工具に名前を書くところから始めよう‼
前項までで、盗難に会いやすいシチュエーションや狙われやすい品物を紹介しました。
では、盗難の被害から身を守るために出来ることは無いのでしょうか?
そこで本項では、防犯対策として個人レベルから企業レベルの方法までを紹介します。
工具自体にできる防犯対策
まず最初に紹介する防犯対策は、個人レベルで工具自体に行える以下の3つです。
- 工具に名前を書く
- 工具を整理整頓する
- 工具を見せないようにカバーを掛ける
では、上記の事柄を具体的に見ていきましょう。
1.工具に名前を書く
個人レベルで行える盗難防止策の1つ目は、ハンディータイプの電動工具や精密測定機器に油性ペンやケガキなどで会社名と氏名を記載することです。
これらの機器に会社名や氏名が記載されていると心理的に盗みにくくなったり、転売の際に記載内容を消す必要があったりするので、一定の効果が期待できます。
しかしながら、中には記載内容を消すところまでを想定した盗難も存在するので、完全に防犯出来るとまでは言えないでしょう。
2.工具を整理整頓する
2つ目の盗難防止策は、工具を日頃から整理整頓しておくことです。
工具が整理されていると、氏名が記載されている時と同様に心理的な負荷が掛かるので、盗みにくいと言えるでしょう。
また、日頃から整理整頓されていると盗難に気付くまでの期間が短くなると期待できるため、早期発見に繋がる可能性が高くなります。
そのため、工具を日頃から整理整頓しておくことが盗難防止に一定の効果があると言えるのではないでしょうか。
3.工具を見せないようにカバーを掛ける
3つ目の盗難防止策は、工具を見せないようにカバーを掛けることです。
前項で紹介した通り、工具の種類やメーカー名を見て盗品が選定される傾向があります。
そのため工具自体を見えなくすると、そもそもの狙いから外れる可能性があると言えるでしょう。
例えば車上荒らしのケースにおいて、外から工具の存在が確認できなければ、窓ガラスを割ってまで内部に侵入するにはリスクが大きいと判断されると推察されます。
そのため、工具を見せないようにカバーを掛けることにも一定の盗難防止効果が期待できると考えられます。
車上荒らしへの防犯対策
車上荒らしには、車内の工具を持ち出すケースと車ごと持ち去るケースが存在します。
これらの盗難を防犯するため、警視庁のHPでは以下のような自動車盗難防止装置を紹介されています。
- タイヤロック
タイヤに装着し固定する装置 - ハンドルロック
ハンドルに装着し固定する装置 - 警報装置
ガラス破壊などの衝撃を感知して警報を鳴らす装置 - GPS機能付位置探査装置
車を盗難された際でも位置を探査できる装置 - イモビライザー
エンジンキー内のIDと車に搭載されているIDを照合して、エンジンを起動させるシステム
このように、上記を使えばハードとソフトの両面での盗難防止対策が実施可能です。
また、同HPによると「リレーアタック」と呼ばれる車の盗難手口も紹介されています。
リレーアタックとは、車のスマートキーから常に放出している微弱電波を特殊な機器を用いて受信・増幅させ、車のカギを開ける盗難手口です。
リレーアタックを対策するには、スマートキーから放出される電波を遮断するか停止する以下の方法が有効です。
- 市販の防犯ケースを用いて電波を遮断する
- 金属缶やアルミホイルの中に入れて電波を遮断する
- 節電モードにして電波の受信を停止する
このように、少し手間の掛かるものから手軽に出来る内容まで様々な対策があるので、少しづつでも盗難防止対策を充実させていくと良いのではないでしょうか。
建屋侵入に対する防犯対策
建屋侵入に対する防犯対策は、「ドアの防犯」と「窓の防犯」が一般的です。
車上荒らしの防犯対策と同様に、警視庁のHPでは以下のようなプランを紹介しています。
1.ドアの防犯対策
ドアの防犯対策には、以下のプランが提案されています。
- 補助錠を取り付ける
2つ以上のカギが設けられていると侵入に時間が掛かるので、一定の防犯対策になります。 - ガードプレートを取り付ける
ドアとドア枠の間を埋めることで、バールなどでのドア錠破壊を防ぎます。
上記の他にも、同HPではピッキングやサムターン回しなどに強い建築部品(CP部品)の設置を推奨されています。
2.窓の防犯対策
窓の防犯対策には、以下のプランが提案されています。
- 補助錠を取り付ける
窓の補助錠は、窓の動作方向に動きを制限する突起を用意するものが一般的です。
また、クレセント錠にはロック付きの物が推奨されています。 - 防犯フィルムを貼り付ける
防犯フィルムを貼り付けることで、窓が割れにくくなります。
そのため、建屋侵入に時間を有するため一定の防犯対策になります。
また、ドア用や窓用に限らない様々な防犯対策部品として、CP部品というものが存在します。
CP部品とは、警察庁及び関連省庁と民間団体において試験を実施し、一定の防犯性能があると認められた建物部品です。
このように、様々な防犯用の部品が存在しますが、基本的な防犯対策は「確実に戸締りを行うこと」になるので、各種防犯対策とともに戸締りを心掛けることが大切です。
工事現場での防犯対策
工事現場での防犯対策は、以下の3つです。
- 防犯カメラを設置する
- センサーライト・警報装置を設置する
- 警備会社に依頼する
「防犯カメラの設置」と「センサーライト・警報装置」の設置は、窃盗犯への抑止力及び犯人逮捕に繋がる情報を残すことが可能です。
しかしながら、これら2つには盗難を止める効力は無いため、上記とあわせて「警備会社に依頼する」とより安心だと言えるのではないでしょうか。
工具盗難の状況から防犯対策までを徹底解説‼ まとめ
今回は、工具の盗難の状況から防犯対策までを紹介しました。
工具の盗難を未然に防ぐには、まず名前を書くことや工具を隠すことなどすぐ出来る対策もありましたね。
この記事を参考に、防犯意識を高め盗難の被害を少しでも減らすことが出来れば幸いです。
工具を取り扱っている会社で働いてました。
父親が現場関係の仕事をしていたために、幼い頃から工具が身近にありました。
HiKOKIのハンディクリーナーを愛用しています。