現在の生活に欠かせないインフラシステムの1つに水道とガスがあります。
これらは、地中や建物内部に設置されている配管が主なシステムとなっています。
では水道管やガス管の工事には、どのような工具が使われるのでしょうか?
そこで今回は、配管工事において多く用いられるパイプレンチについて紹介します。
パイプレンチとは?パイプレンチの種類やサイズも紹介!
皆さんの中には、パイプレンチという工具をご存じない方も多いかもしれません。
パイプレンチは、配管工事に特化した工具で様々な種類が存在します。
そこで本項では、パイプレンチの概要や種類などについてを紹介していきます。
パイプレンチとは?
パイプレンチとは、主に水・油・ガスなどの配管工事に使用される工具です。
配管の接手部分には、フランジ式やくいこみ式・ねじ込み式などの様々な種類があります。
その中で、特にねじ込み式は接手内部にネジが切られているため、くいこみ式のようなスパナやモンキーレンチを使えるような六角部分がありません。
そのため、ねじ込み式の接手を組付け・分解する際には、配管自体を固定して行う必要があります。
そこで使われるの工具がパイプレンチです。
パイプレンチは、歯が付いた2枚のプレートに配管を挟むこむことで、配管をそのまま固定及び動作させることができます。
このように、パイプレンチは配管工事(特に配管の組付けや分解)に特化した工具と言えるでしょう。
パイプレンチの種類は何がある?
パイプレンチの種類は、強度・形状・用途により分けられます。
では、パイプレンチの強度・形状・用途はどのように分類されているのでしょうか?
本項では、パイプレンチの強度・形状・用途をそれぞれ解説していきます。
1.パイプレンチの強度
パイプレンチの強度は、JIS B 4606により以下のように定められています。
表示 | 材質 | |
普通級 | N | S45C |
強力級 | H | SCM435 |
(備考:材質は上あご及び植歯部分を指す。また、JIS B 4606記載のSCM3はSCM435の旧JIS記号である)
普通級に用いられている材質S45Cは、JIS規格で定められた機械構造用炭素鋼で、一般的な鉄(材質SS400)よりも硬い素材です。
そのため、ギアやボルト・ナットに使用されているケースが多く非常に一般的な素材と言えるでしょう。
一方、強力級に使用されている材質SCM435は「クロムモリブデン鋼」として知られています。
また、SCM435は強度や耐摩耗性に加えて500℃での高温環境下でも強度が落ちにくい特性から、エンジン部品や自転車のフレームまでさまざまな部品に使われています。
2.パイプレンチの形状
次に紹介するのは、パイプレンチの形状による以下の分類があります。
- トライモ型
- リッジ型
トライモ型パイプレンチは、日本で最も普及しているパイプレンチして知られており、本体(工具の持ち手部分)とフレーム(上あご可変部)が別の部品で構成されています。
また、本体とフレームが分かれていることにより、ラチェットのような動作が可能です。
一方リッジ型パイプレンチは、本体とフレームが一体化した構造をしており、トライモ型の様に上あご可変部に設置されている丸ナットを回すと上あごが動作します。
その他にもステルソン型パイプレンチも存在しますが、日本ではほとんど市販されておらず、日本ではトライモ型が主流、リッジ型が一部市販されているという印象です。
3.パイプレンチの用途
次に、パイプレンチの用途による分類を紹介します。
パイプレンチの用途は、大きく以下の3つに分類されます。
- 白管用
- 被覆管用
- コーナー用
白管用のパイプレンチは、軽量で配管を固定する歯が粗くことが特徴です。
白管とは、丈夫で防錆効果の高い亜鉛メッキを施した配管のことを指し、上水道用を除く水道管やガス管などに使われています。
そのため、外観上の品質問題に発展しずらい配管と言うことができ、軽量で作業性に優れたの白管用のパイプレンチが最適と言えるでしょう。
一方、被覆管用パイプレンチは口に設けられた歯が細かく作られているので、配管表面に傷を付けにくい特徴があります。
そのため、被覆管のほかに表面に傷を付けたくないケースに有効だと言えるでしょう。
コーナー用パイプレンチは、モンキーレンチの様に上向きにあごが開いている形状をしているため、頭上や壁面などの入り組んだスペースでの作業に適しています。
その他にも、チェーンレンチ・ベルトレンチ・フランジレンチと言った配管やフランジ面に巻き付けて作業を行える特殊工具も存在します。
パイプレンチのサイズについて教えて!
パイプレンチの口のサイズは、以下の表のように配管の外形に基づき設定されています。
呼び径 | 外形(mm) |
15A | 21.7 |
20A | 27.2 |
25A | 34.0 |
32A | 42.7 |
40A | 48.6 |
50A | 60.5 |
65A | 76.3 |
80A | 89.1 |
100A | 114.3 |
(備考:JIS B 3452参照)
このように、パイプレンチのサイズは配管サイズに応じた種類があるので、スパナやメガネレンチを使用する時のように取り扱う配管を確認の上での選定が必要です。
パイプレンチの使用方法は?選び方から注意点までを紹介!
前項では、パイプレンチの概要から種類やサイズまでを紹介しました。
さらに、パイプレンチの使い方や注意点を知っておくとより効率よく安全に作業ができると期待されます。
そこで本項では、パイプレンチの選び方から使い方と注意点について紹介してきます。
パイプレンチ選び方
パイプレンチの選び方は、前項で紹介した使用用途に応じた強度やサイズを選定するほかに、作業性やメンテナンス性も考慮すると良いでしょう。
特に金属製品での永遠の課題ともいえるサビに強いアルミ製やステンレス製のパイプレンチがおすすめです。
これらの使い分けは、長時間作業をする際はより軽いアルミ製を、より力を必要とする場面では強度の高いステンレス製を用いると良いのではないでしょうか。
その他にも、メモリ付きのパイプレンチであれば配管の簡易計測が出来たり、グリップに樹脂コーティングが施されているパイプレンチであれば、手元が狂う可能性を少なくすることができます。
パイプレンチの使用方法
パイプレンチの使用方法は、大きく分けて3つの動作が必要になります。
- 配管を掴む
- 配管を回す
- パイプレンチを取り外す
では、順を追って確認していきましょう。
1.配管を掴む
配管の組付け・分解作業をするには、まずパイプレンチで正確に配管を掴む必要があります。
正確に配管を掴むとは、パイプレンチの口を配管に対して垂直となるように設置し、パイプレンチの口を閉じていきます。
この際に、パイプレンチの口の側面と配管の表面の接地面がより多くなるように掴むことが理想的です。
2.配管を回す
次に、パイプレンチを用いて配管を回していきます。
トライモ型パイプレンチでは、口を中心にして上あご方向に回転させると配管がより締め付けられる構造です。
そのため、配管を締め付ける時は時計回り方向に、緩める時は反時計回り方向に回して作業を行います。
また、手締めをした後にパイプレンチを使ったり、取り外す際は最も力が必要な最初の1回転にパイプレンチを使ったりすると、より効率よく作業ができると期待されます。
3.パイプレンチの取り外し
最後に、配管からパイプレンチを取り外します。
トライモ型パイプレンチは、回転方法(口の開いている方向)とは逆向きに回すと口が開く構造となっているので、取り外しが簡単です。
またリッジ型では、パイプレンチ本体にある丸ナット緩めて配管から取り外します。
この際に斜めに取り外したり、丸ナットを緩めずに取り外したりすると、配管の表面に傷をつける可能性があるので注意が必要です。
パイプレンチの取り扱いの注意点
前項では、パイプレンチの主な使用方法を紹介していきました。
しかしながら、組付けや分解作業中にパイプレンチが滑ってしまう場面も少なからず存在します。
パイプレンチが滑ってしまうと配管の組付け・分解が上手く出来なかったり、配管に傷をつけたり、作業者がケガをしたりすることもあるため注意が必要です。
そこで本項では、パイプレンチを用いる際の注意点を紹介しています。
1.パイプレンチが適切に設置されていない
パイプレンチが滑る原因に、パイプレンチが適切に設置されていないケースがあります。
パイプレンチと配管表面が十分に接触していない状態で作業を行うと、作業者の力がパイプレンチの歯から配管へと上手く伝わらずに滑る可能性が否めません。
また、このケースでは配管の組付けや分解に多大な力を必要とし、配管の表面を傷つけたり作業者のケガをしたりする恐れがあるので、作業前にパイプレンチの設置確認をすると良いでしょう。
2.配管とパイプレンチのサイズが合っていない
次に、配管とパイプレンチのサイズが合っていないケースを紹介します。
パイプレンチの各メーカーでは、口の広がる最大サイズと柄の長さが比例するように様々なラインナップがあります。
そのため、パイプレンチのサイズが配管に対して小さすぎると、より多くの力が必要となり手元が狂いやすくなる可能性は否めません。
また、パイプレンチのサイズが配管に対して大きすぎると、配管の組付けに対してオーバートルクになる可能性があり、配管を変形させてしまう恐れがあります。
そのため、配管サイズを確認の上、適切なサイズのパイプレンチを選ぶ必要があります。
3.パイプレンチの歯が汚れている
最後に、パイプレンチの歯が汚れているケースを紹介します。
パイプレンチの歯にゴミが挟まっていると、パイプレンチの選定や設置が適切に行われていたとしても、挟まったゴミが緩衝材となり力が伝わりにくく、パイプレンチのグリップ力が低下する恐れがあります。
上記の状態で作業をすると、パイプレンチが滑ったり、配管表面にゴミ噛み跡が残ったりと災害や不具合に繋がる可能性を無視できません。
そのため、パイプレンチの使用前に歯の部分の衛生状態を確認する必要があります。
パイプレンチはどうメンテナンスすればいい?
パイプレンチをメンテナンスするポイントは以下の2つです。
- 摺動部がスムーズに回転するか
- 歯にゴミが詰まっていないか
これらは、パイプレンチを安全かつ快適に使うために必要な要素です。
では、どのようにメンテナンスを進めると良いのでしょうか?
上記2つのポイントを踏まえ、以下の手順で行うと効率的かつ確実にメンテナンスができます。
- 上あごを外す
- 摺動部に潤滑油を挿す
- 歯のゴミを金属ブラシとやすりで掃除する
- 丸ナットのネジ部を掃除する
- 組み立てる
上記のように、パイプレンチの摺動部に油を挿したり、歯部やネジ部を分解整備していることがわかります。
また、定期的に工具をメンテナンスすることで作業効率の向上したり、工具を長く使えたりすると期待できます。
パイプレンチの使い方からメンテナンスを徹底解説!まとめ
今回は、パイプレンチの概要からメンテナンス方法までを解説していきました。
パイプレンチは、配管工事には欠かせないアイテムだということがわかりましたね。
この記事を参考に、パイプレンチの導入や安全で快適な作業の一助になれば幸いです。
工具を取り扱っている会社で働いてました。
父親が現場関係の仕事をしていたために、幼い頃から工具が身近にありました。
HiKOKIのハンディクリーナーを愛用しています。